「私は流行を作らない。私こそが流行だ」 強烈な自負の言葉を残したココ・シャネル。彼女の人生を占星術でひもとくと、まるで星がその軌跡を設計していたかのように見えてきます。
星占いで人物を占う方法はいくつかあります。その中でも古くから使われている方法が、太陽と月でみる方法です。これは、生まれたとき天空に輝いていた星の配置を、ホロスコープという12星座の天体図にしたとき、太陽と月が何座に入っているかを調べて占う方法です。
一般的に雑誌やWEBの占いページに出てくる星占いは、生まれたときに太陽が入っている星座をみます。よく「あなたは何座ですか?」と聞いたときに、「私は○○座」とすぐに答えられる星座は、実は出生時に太陽がその星座の位置にあったことを示します。
一方で、自分が生まれたときに月が何座の位置にあったのか、占星術に詳しい人でない限り、それを知っている人はそんなに多くはいないと思います。
ところが、占星術では太陽の星座だけでなく、この月の星座も導き出すことで、その人の個性や性格、人生といったものが読み解けるといわれているのです。

話をココ・シャネルに戻しましょう。
ココ・シャネル(本名ガブリエル・ボヌール・シャネル)の生年月日は 1883年8月19日、フランスのソーミュール(Saumur, France)生まれです。
出生時刻については正確な記録が残っていないのですが(研究者によって諸説あり)、出生地と日付から生まれたときのおおよそのホロスコープを作成することはできます。
彼女のホロスコープを出してみると、太陽は獅子座、月は蠍座にありました。
占星術では「太陽」は人生のテーマや生き方を表します。獅子座は舞台で主役を象徴する星座で、堂々と人前に立ち、自己を表現することが使命です。シャネルが帽子店からキャリアを始め、女性たちを「自由に、そして美しく」見せる舞台装置を作り上げたのは、この獅子座らしさそのものです。
一方、「月」は心の奥の感情や安心の源を示します。シャネルの生まれた日に、月は蠍座にありました。蠍座は情熱や執着、そして“死と再生”の力を象徴します。若き日の恋人“ボーイ”・カペルの死をきっかけに彼女の人生は大きく揺さぶられましたが、それを糧にして「シャネル」というブランドを再生させていった姿は、蠍座の月の影響を強く感じさせます。
太陽=獅子座、月=蠍座という星の配置は、ココ・シャネルの個性とその人生に大きな影響を与えているかのようです。
恋愛──華やかに燃えて、深く刻む
太陽が獅子座にあると、恋でも舞台の主役となります。シャネルが惹きつけたのは、英国の大富豪や社交界の名士たちでした。彼女の恋は常に華やかで、人々の注目を浴びました。
しかし、月の星座は蠍座ですから、ただの華やかさでは満足しません。占星術では、こと恋愛に関しては、太陽よりも感情を支配する月の星座のほうが、強く影響を与えます。蠍座は「すべてをかける愛」を求める星座。愛する人にのめり込み、その人と一体化することを望みます。愛する人への執着も強く、そのぶんその愛を失ったときの痛みもとても深い。
シャネルが最愛の恋人“ボーイ”・カペルを交通事故で失ったとき、彼女の内面は深く揺さぶられました。おそらく絶望の淵に立たされ、その喪失感は彼女の心を打ちのめしたことでしょう。そこから這い上がるために、彼女は服や香水をつくり出すという新規創造、クリエイションへと没頭していきます。面白いことに、12星座の中で「創造力」を司るのは獅子座。彼女は月が表す蠍座の感情──恋人を失ったという深い悲しみ──を心の奥深くに封印し、代わりに獅子座に入っている太陽の力を借りて奮起します。太陽が象徴するのは「人生のテーマ」。彼女は獅子座らしく「女性を解放するファッションを創り出す」という人生のテーマを選び、その道をひたすら突き進んでいったのです。
人間関係──カリスマと孤高
表舞台では誰よりも輝く。これが獅子座の太陽の力です。社交界の華やかなサークルに立つと、彼女は自然に注目を集めました。
けれども、月が蠍座にある人は、人を簡単には信用しません。信頼を置く仲間はごく少数で、その代わり強い絆で結ばれます。シャネルがアトリエで妥協を許さず、信じたスタッフとともに徹底した美学を貫いたのも、太陽=獅子座、月=蠍座の配置を思わせます。外では獅子座特有のカリスマ性を発揮し、内では蠍座特有の孤高の精神をもつ彼女。この二面性が、ブランドの一貫した美を支えていました。
ビジネス──獅子座の演出力と蠍座の執念
獅子座は“見せ方の天才”です。シャネルは1910年代にジャージー素材で動きやすい服を作り、1921年には香水『No.5』を発表しました。どちらも「新しい見せ方」で女性の生活を一変させました。
しかし、シャネルの服も「No.5」の香水も、単なるファッションの範疇にとどまらず、自由と個性の象徴になったのは月が入っている蠍座の力でしょう。蠍座の月のパワーは、人々の心に「強烈な印象」を残します。シャネルのツイードスーツも香水も、女性の生き方を変えるほど一世風靡しましたが、それは蠍座の月が彼女に与えた使命だったのでしょう。
晩年──死と再生の物語
1939年、第二次世界大戦の混乱の中、彼女は活動を休止します。戦時中のドイツ軍将校との恋愛が戦後厳しく糾弾され、母国フランスから追放されたのです。しかし、「死と再生」の星座ともいわれる蠍座。そこに感情や本心を表す月が入っているのですから、彼女がそのまま引退するとは思えません。おそらく当時のシャネルの心中は、モードの世界への復活を密かに息をひそめて待っていたのではないでしょうか。
1954年スイスから母国に戻り、71歳にしてパリでメゾンを再開します。当初は時代遅れと酷評されましたが、風評に動じることなく華麗に復活を果たしました。そして再び世界を席巻。この自分を信じて疑わなかった復活劇こそ、シャネルに宿る星座の導きそのものだと感じます。晩年に残したツイードスーツや2.55バッグは、ブランドを「様式」にまで高める集大成でした。1971年、リッツ・ホテルで亡くなるその日まで現役を貫いた姿は、獅子座の「誇り」と蠍座の「執念」を最後まで表していたといえるでしょう。
星と人生の一致
振り返れば、シャネルの人生はまさに太陽=獅子座と月=蠍座の物語でした。獅子座の太陽が人前での自己表現と演出力を与え、蠍座の月が愛と喪失、そして再生の物語を織り込みました。
彼女が残したもの──香水、リトルブラックドレス、ツイードスーツ──はいまも世界中の女性を魅了し、それらを身にまとうことで女性たちに自信と誇り、勇気を与え、舞台の主役に立たせています。それはきっと、星が彼女に託した永遠の使命だったのでしょう。
シャネルは、単なるブランドではなく、シャネルの生き方そのものなのです。


