ああ、いとしい「月」よ。 私たちは、 あなたのことを ほとんどなにも 知りませんでした。
私たちに最も身近な天体「月」。美しく輝き、日々映る姿を神秘的に変え、数多くの芸術家を虜にし、物語、歌、絵画、舞台映画で慕われ、私たちを魅了してきた「月」。
1969年人類はアポロ 11号で初めて月面に着陸し足跡を残しました。
その後、1972年までに合計12名の宇宙 飛行士が月面に立ち、科学の大きな進歩に貢献しました。しかしそれ以後半世紀に渡り、人類は月に一度も着陸していません。
冷戦期の米ソ宇宙開発競争が終わったという政治的 、経済的理由が主な理由ですが、長い空白期間は多くの人々の想像力を掻き立てました。
なぜ人類はあれ以来「月」から遠ざかったのか、
人類は、何か知っては いけないものを「月」に見てしまったのではないか?
といった憶測やあげくは「アポロは月に着陸しなかったのではないか?」といった陰謀論まで巻き起こりました。
月と人類の関係は科学の分野ににとまらず、もっともらしいミステリー仕立ての
エピソードにさえなっているのです。
21世紀 に入り再び月へ人類を送ろうという計画が動き始めています。
NASASAの アルテミス計画では2020年代に有人着陸を復活させる予定であり、
中国も月面基地建設を見据えています。
しかし私たちは、この50年で「月」のことをどれほど正しく理解をしたのでしょうか?実はほとんど理解が進んでいないというのが現実です。
21世紀の現在でも科学では説明しきれない多くの謎が月に潜んでいるのです。
その謎をこれから皆さんとともに紐解いていきましょう。
月の大きさと位置
幻想的な皆既日食、美しい満月、神秘的な新月、そして月が日々形を変える仕組みには、
地球、月、太陽の絶妙ともいえる距離、位置が影響しています。
地球の唯一安定的に存在する衛星「月」の直径は3474km。地球の約4分の1という大きさです。
木星の最大の衛星としてよく知られるガニメデは木星の約26分の1と言われるので、
月が地球に対していかに巨大な衛星かがよくわかります。
そして月と太陽の距離は 1億5千万km。太陽が月の400倍も大きく、地球から太陽までの距離が400倍も遠い地球からは、月と太陽は同じ大きさに見えます。よく知られる皆既日食は、太陽、月、地球が一直線に並び、月と太陽が地球から見たら同じ大きさに重なるのです。
太陽が月の400倍の大きさ、地球から太陽までの距離が400倍になったのは、偶然の一致と言われ、
どうしてそうなったのかは当然ながらまだ解明されていません。
なぜ月の裏側は見えない、
月の自転と公転
月は地球の周りを約27.3日かけて1周します(公転)。
そして月は、地球の周り1周する間に月自身の軸を中心に公転と同じく約27.3日かけて1回転します(自転)。月は地球の周りを公転し、同じ周期で自転をするため地球からは、
月の表面の同じ部分しか見えません。
月の満ち欠けは月と地球、太陽の位置が変わることで起きます。
月は地球のまわりを公転しながら、地球といっしょに太陽のまわりをまわっています。
月は約27.3日で地球を公転します。その間地球から月が見える方向が変化します。あるときは月は、太陽と反対側で、地球から見えるのは月の夜側です。
夜側の月面はまっ暗なので、月の姿はほとんど見えません。
この状態が「新月」です。新月から約15日経つと、月は地球から見て太陽の反対側に移動し、
月面の昼の部分が全部見えるようになります。これが「満月」です。月の満ち欠けは、地球から月を見る方向が変化するために起きているのです。
知っていそうで知らない、地球と月と太陽の動きの関係を知っておくことは、月を理解するうえで、とても重要です。
月の影響―月は地球になくてはならない存在
地球に生命が誕生し、繁栄する上で月が極めて重要な働きをして
いたという事実は、科学の進歩によって 明らかになっています。
月が地球の自転軸を安定化させているという指摘です。
地球は23.4°ほど軸を傾けて太陽の周りを好転していますが、
この軸の傾き地軸傾斜が、わずかでも変動すると、
氷河期と乾燥期の気候変動を引き起こすそうです。
しかし幸いなことに地球の地軸は劇的には変化しません。
これは月という重い衛星が地球の傾きのブレを抑えてくれているおかげです。
もし月が存在しなければ知軸は驚異的に変動しうるとされ、
極端な場合には現在より大きく傾いて地球は、天候が大激変し、
暴風と猛暑と大寒冷にさいなまれるような極端な状態になりかねないといわれます。
安定した気候のもで進化してきた後に気候の激変があれば、
生物が果たして生き延びられるでしょうか?
少なくとも人類のような知的生命体が
進化する可能性は一著しく低下しただろうと考えられています。
潮の満ち引き
月が私たちの生活に深く関係することとして、満潮や干潮などの潮の満ち引きがあります。月の引力によるもので、月が潮の満ち引きを起こす力を潮汐力(ちょうせきりょく)と言います。現在海面の水位(潮位)は約半日の周期でゆっくりと上下に変化しています。
海水は液体なので、地球上で月に向いた面の海水は、月の引力に引かれて少し持ち上げられ満潮になります。月の反対側も満潮になります。月と直角になる方向では海水が低くなり干潮になります。
また月の半分ほどの引力ですが、太陽の引力でも潮の満ち引きは起こり、月と太陽の潮汐力が補完しあう満月や新月の頃には、潮の満ち引きが大きい大潮に上弦のや下弦の半月の頃には満ち引きが小さい小潮になります。
潮の満ち欠けは、自然環境にも人間活動にもさまざまな影響を与えます。潮の満ち引きにより海洋生物の食事と活動時間が決まってきます。また、月の引力や満ち欠けは海洋生物の産卵などの行動に周期的な効果を及ぼしているとされます。
さらに生物学的進化の視点では潮の満ち引きが生物の多様性を促進した可能性があります。海岸の満潮時には、海面に露出する環境変化に適用するため生物に強い進化力がかかります。干潮時は、全く異なる 環境にさらされる生物たちは過酷な環境変動に耐えるため様々な工夫 進化を遂げたとされています。例えば満潮時に海水と共に有気物 が岩場に打ち上げられ、干潮で水分が蒸発すると物質が濃縮されます。ここに太陽光 や雷などのエネルギーが加われば科学反応が進み再び満潮で材料が供給されという サイクルが繰り返されます。そこに種の多様性が生まれたといわれています。
月がなかったら海岸の生態系はるかに単純で種の対応性も乏しかっただろうといわれるのです。
そのことは、私たち人間の進化に影響を及ぼしました。
月による潮の満ち引きが生命の誕生そのものを助けたのです。
科学者たちの中には月がなければ地球に生命は誕生しえなかったか、
少なくとも大きく遅れただろうと考える人もいます。
私たちが慣れ親しんだ「月」のことは、実はまだほとんど知られていません。
私たちの運命の指針にも影響する「月」に敬意をこめて、これから勉強していきましょう。
(つづく)

